税理士業には「保険診療」も「窓口収入」もない。既存の商慣習にとらわれない<No 94>
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医業の仕組みは参考にすべき
ケガや病気をすると、保険証を持って医療機関に行きます。
初診なら窓口で保険証を提示して、診察券を作ってもらいます。
診察が終わると、窓口で会計を終わらします。
自分が医療にかかったとき、「いいシステムだな」とつくづく思いました。
- サービス完了直後に回収できる現金収入がある
- 窓口収入以外は保険で保証される
- 原則、1割から3割で目に見える負担が少なくてすむ
- 支払を誰も拒まない
これだけ整った「債権回収方法」は他に見当たりません。
もちろん、「窓口で払わない人」、「保険証が切れてる」など、
例外はあるでしょうが、世間一般の商慣習の中では、質の高い回収方法です。
既存の商慣習にとらわれない
1673年、江戸本町には大きな呉服店が建ち並びました。
三井グループ創業者の三井高利は、大口の顧客をもたずに苦戦していました。
これまでのスタイルでは、支払いは年に1~2回の掛売りであったため、掛値を乗せた値段は割高になり、さらに資金の回転も悪い。店にも客にも不利益をもたらす方法だったのである。
しかし、客は当たり前のこととして、このシステムを受け入れ、店も伝統や習慣を頑なに守ろうとして、他の方法があることを考えもしなかった。佐藤光浩『遅咲きの成功者に学ぶ逆転の法則』(文藝社、2016年)84頁
そこで、高利は、次の方策に出ました。
- 消費者でなく呉服商に品物を卸した
- 店頭販売を始めた
- 現金販売を始めた
業界特有のやり方はありますが、視点を変えてみれば、より良い方法はあります。
ただし、既存の先輩方と異なるやり方を導入するとなると、そこはやはり圧力を受けます。
高利もまた、同業者からの嫌がらせを受けましたが、自身のやり方を貫き成功を収めました。
「古い業界で新しいことを成功させるには?」との問いに対して、田原総一朗さんは、
ケンカは我慢。したたかに共存せよ
PRESIDENT(2015.8.17号)93頁
と答えています。
田原氏の言葉は、短いですが端的で重みがあります。
税理士業にも求められる原価管理と債権回収能力
これまで、回収出来ない債権をかかえる方を多く見てきました。
当時は私自身も若く、「大変だな」くらいにしか思いませんでしたが、
そもそも回収出来ない方の多くは、
- 請求しない
- 話そうとしない
- 努力しない
特に税理士のように、自身の能力そのものがサービスとなる事業においては、
形として目に見える「商品」がないことから、強く回収出来ないのかもしれません。
しかし、目に見えないからこそ徹底した「原価管理」が必要であり、
自分自身に値段をつける必要があります。
税理士に限らず、知識や考えをサービスとして事業を行う方すべてについて言えることです。
「ケンカは我慢」しつつも、既存の商慣習にとらわれることなく「したたかに共存」する。
そうありたいです。
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