書きたいこと?書けること?論文タイトルの決め方<No 187>
<セミナー・コンサルティング情報>
)租税法/金子 宏
Contents
入学前に出来ること
税理士試験と並行して、税法免除のため大学院に通われる方も多いことでしょう。
私も2014年4月に法学研究科の修士課程に入学しました。
当時、情報がなかったために入学することも大変でしたが、入学してからも大変でした。
同級生の多くは、大学院入学のための専門予備校に通われていました。
これらの方々は、予備校にて大学院で行われることを既に把握しています。
なかには、論文タイトルを既に決めて、論文執筆を進めている方もおられます。
論文タイトルは入学してからでも変更は出来るので問題はないのですが、そもそも、何について書けばいいのかがわからない方もいらっしゃるでしょう。
論文は、税法の規定そのものを書くのではなく、
議論の余地がある題材について
それぞれの立場で、体系立てて論じていきます。
そして、
- 学者の意見(学説)を引用する
- 判例を引用する
ことにより自分の意見をより説得力のあるものにしていきます。
そのために、税法の規定とずっと「にらめっこ」するのではなく、学説や判例などの文献を、「見つけ出し」、「読み込む」作業がメインになります。
そのため、入学前に「判例とは何か」「学説とは何か」少しでもふれておくと良いです。
「租税判例百選」で有名どころの判例を見ます。
- 大島訴訟(憲法と租税法)
- 武富士事件(住所の意義)
- 弁護士夫婦事件(所得税法56条の適用範囲)
- 長崎年金二重課税事件(非課税所得)
そして、自分が興味がありそうな判例を探します。
カテゴリー別に掲載されているので、
税目からチェックするのもいいでしょう。
書きたいこと?書けること?
論文タイトルは、「書きたいこと」にすることをおススメします。
- 書きたいこと
- 興味のあること
でなければ、辛い執筆作業を続けることは出来ません。
30,000字の文字数を埋めることもさることながら、50から100の引用参考文献を集めることは、「書きたいこと」「興味のあること」でなければ、苦痛でしかありません。
ただ、あまりに「書きたいこと」に固執するあまりに、書ききることが出来ずに断念することもあります。
場合によっては、「書けること」を選択することも必要です。
指導教授と議論する
入学した時点で論文の指導教授はすでに確定しています。
ですので、まずは指導教授の研究室におもむき、「書きたいこと」「興味のあること」を伝えます。
本来、学生が選んだ論文タイトルであれば、何にでも対応して欲しいところではありますが、指導教授にも専門分野があります。
ですので、指導教授が対応してもらえるかどうか確認する必要があります。
卒業生のタイトル一覧を見る
大学院の事務局で、過去の卒業生の論文タイトルを閲覧します。
過去に卒業生が書いたタイトルであれば、論文のタイトルとしては、その大学院を卒業するための最低限の基準を満たしていることになります。
結論が同じである必要はない
同じタイトルであっても、同じ内容でなければならないことはありません。
タイトルの選定で大よその扱う判例は限定されてきますが、スタートが同じでも結論は違っても構いません。
そもそも、最高裁までもつれるような判決には「議論の余地がある」からです。
私が取り上げた判例も、地裁・高裁・最高裁といずれも異なる内容の判決でした。
また、判決の結果が同じでもその判決が出るまでの裁判官の論理が異なることもあります。
税理士試験では見えないことを経験をする
研究では、
- 税務署(課税庁)の考え方
- 司法の考え方(判例)
- 学者の考え方(学説)
それぞれ異なることを体系立てて学びました。
税理士試験では、多くの税法規定を暗記します。
しかし、その解釈が、それぞれの立場によって異なることを深く学ぶことはありません。
大学院での研究を、「試験の回避」ととるのか、「将来必要になる有意義な知識の吸収」ととるのかによって、そこに費やした時間とお金の価値が問われます。
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