JDL IBEX出納帳Majorで個人から法人成りしたときの対処法(税理士向け)<No 1887>

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選択権はお客さまにある
今日は、久しぶりに税理士向けの記事を書いてみます。
税理士の多くが会計ソフトを利用していて、顧問のお客さまにも会計ソフトを導入するお手伝いをしています。
お客さまが好きなソフトを選ぶのが一番ですが、税理士側から紹介することもあります。
私が紹介するのは以下の3つ。
- Money Forward(クラウド会計)
- JDL(従来型のパソコンにインストールするソフト)
- Excel
お客さまがすでにお使いのソフトに慣れていれば、そのまま使っていただいています。
このなかで、JDL(日本デジタル研究所)のお客さま向けソフトであるJDL IBEX出納帳は無料で提供できます。
クラウド会計を契約すると、個人事業主であれば月額2,000円程度、法人であれば月額3,000円以上費用がかかります。
無料で使えるのでお客さまにとっては便利なのですが、JDL出納帳は税理士にとって難点が一つあります。
それは、「ソフトの移し替えがめんどくさい」ということ。
パソコンにインストールして使うため、「1PCにつき1つの事業のみ」という制約があります。
「お客さまが新しいPCを買って移し替える」ぐらいであれば、めんどくさいなりにもなんとかなるのです。
今回は、個人のお客さまが期中に法人成りして事業年度が変わったケース。
普通にありそうなのですが、これまで、個人時代は紙でやりとりして、法人からソフトを入れたりだとか、法人成りする局面からの関与であったりとかで意外とはじめてでした。
「日曜日にPC受け取りで月曜日にお渡し」というタイトなスケジュールも困難であった理由の一つです。
JDL IBEX出納帳Majorで個人から法人成りしたときの対処法
問題点1
お客さま側のPC1台につき1つの事業しか扱えないという制約。
税理士側のソフトでは、お客さまの会計ファイルをほぼ無制限に登録・操作できますが、お客さま向けのIBEX出納帳ソフトは、1台のPCに1つの事業しかインストールできません。
また、インストール型のため、データの移し替えの過程で不具合が生じると、ソフト自体が動かなくなることがあります。
税理士としては、JDL側の強固なセキュリティが故に使いにくい。
通常のソフトであれば、お客さま側ののソフトを一度削除し、新たに法人のファイルを作成するのがセオリーだと考えられますがいかに?
問題点2
個人事業の会計年度が引き継げません。
個人事業の会計年度は1月1日から12月31日ですが、期中に法人成りした場合、例えば8月5日に設立したとすると、第1期は8月5日から翌年の決算日までなります。
個人の会計ファイルをそのまま繰り越すと、決算日が12月31日になってしまいます。
かといって、個人事業の会計ファイルの決算日を変更することはできません。
廃業したら、廃業の日までのデータで決算組んで申告書に取り込めばいいですが、新たに事業は別業態として継続するので問題あり。
このあたりをどう進めるべきか?
問題点3
個人事業の最後のデータを、法人の会計ファイルに移し替えられるかという問題。
以前であれば、すべて会計ソフトの会社に聞けば簡単に教えてもらえました。
今はマニュアルを見て自分で解決するように促される体制になっています。
マニュアルを一通り探しましたが、レアなケースなようで見当たりません。
以下、ない知恵を振り絞ってたどり着いて正解です。
法人のファイルへデータを移し替える手順
- 会計ファイル作成にて、「法人ファイルを新規につくる」
- 「決算日の変更」
- 「業種区分変更」にて、個人ファイル→法人ファイルへ変更
- 「顧問先運用管理」でお客さまの会計ファイルを上書き
法人ファイルを新規につくる
まず、税理士側のパソコンで、新たに法人成りした法人のファイルを作成します。
ここで、第一期の決算日を法人の決算日(仮6月30日)として設定します。
個人事業の場合、期首期末は1月1日と12月31日に固定されていますが、法人の場合は設立日と決算日を入力できるため、期首を法人設立の日(仮8月5日)、決算日を6月30日に設定できます。
法人成りしたファイルは、個人のファイルとは別のファイル番号で作成する必要があります。
次に、個人の最後のファイルをいったん繰り越します。
- 翌期の個人ファイル 決算日12/31
- 新規法人ファイル 決算日6/30
ここで新しいファイルが2つ出来上がりました。
「決算日の変更」
「財務データ入力」内の「決算年月日変更」を選びます。

変更するのは、繰り越した個人の会計ファイルです。
個人事業の最後の事業年度は令和7年分で、決算日は12月31日でした。
これを繰り越した令和8年分のファイルも、決算日は12月31日になっています。
この決算日を、法人の決算日である6月30日に合わせます。

これで、繰り越された個人の会計ファイルの決算日が6月30日となり、先ほど作成した法人の会計ファイルと決算日を揃えることができました。
「業種区分変更」にて、個人ファイル→法人ファイルへ変更
「業種区分変更」で、個人ファイルを法人ファイルに変更します。

表示される条件を確認し、「変更前の会計ファイル」に個人のファイル、「変更後の会計ファイル」に法人のファイルを選択します。

「変換」を実行すると、うまくいけば個人から繰り越されたデータが、新しく作った法人の会計ファイルにそのまま移行されます。
繰り越された元の個人の会計ファイルはそのまま残るので、削除しても、そのまま置いておいてもどちらでも構いません。
お客さまPCへデータ移送

「自計化システム導入」から、法人ファイルデータが入ったリンクをつくってお客さまPCへ移送します。
次に、新しくできた法人のファイルを、お客様の出納帳ソフトに上書きします。
ここで、新たに作成された法人のデータをお客さまにメールで送信するか、USBやクラウド共有を使って、お客さまのパソコンで開いて移行します。
メールを利用する場合、ご自身のパソコンからお客様のパソコンへメールを送り、お客様にそのメールを開いてもらう必要があります。
お客さまが不在の時に作業をする場合は、メールを開くことについて事前の了承が必要です。
私の場合、PC自体を預かってUSBでデータ移送しています。
これにより、法人成りする前の(お客さま)個人事業時代のデータは見えなくなります。
このことはお客さまに伝えておきましょう。
念のため、個人事業時代のデータは、税理士側でバックアップを取っておきます。
お客さまのPCでやること
USBにデータを保存し、お客さまのPCに差し込んでクリックして開くことで、新しく作成した法人成り後のデータを、お客さま側のPCにインストールします。
まとめ
お客さまがクラウド会計を利用していれば、このような煩雑な作業は必要ありません。
しかし、無料で利用できるため、お客さまの負担がないというメリットも無視できません。
どのようなソフトを使うかは、お客さまの好みによって決めればいいでしょう。
私のお客さまの場合、クラウド会計を利用される方もいますが、IBEX出納帳を提供して使っていただいている方がまだ多いため、今後も需要はあると考えています。
今回、将来またこのような事態になった際の備忘録として、この記事を書いておきました。
JDLのマニュアルにも載っていなかったようなので、同じように困っている税理士の方がいらっしゃれば、参考にしていただけると幸いです。
<編集後記>
8月31日 日曜日
5時45分起床後ルーティン、勝尾寺ヒルクライムバイク練。
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