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読了「テスカトリポカ」。残虐を覆い隠す悲哀とその描写力<No 1428>

※ ネタバレあります。

テスカトリポカ

記憶の再現

2021年の直木賞と山本周五郎賞をダブル受賞した本作。

日経の広告欄で「メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人〜」が目に入り、直木賞作家が描いたマフィアに興味が湧きポチりました。

読後に読んだレビューで、「残虐性のある描写、故に選考委員のなかでも割れた」そうです。

確かに、日本を代表する文学賞で残虐性がある作品を扱ってもいいのか?

おそらく、残虐性だけであればスプラッター作品ですが、本作はその残虐性を上回る悲哀が選考委員の心を打ったのかなと。

確かに残虐性を帳消しにする悲哀はあったのですが、それよりも私が引き込まれたのは、

  • 卓越した描写力
  • 異なる分野の網羅性
  • 綿密な下調べ

があったからでした。

メキシコのカルテルの描写は、映画「ボーダーライン」と重なるところがあり、違和感なく入っていけました。

難しかったのは、アステカの儀式。

生贄を、ただ残虐な行為と捉えるか、神聖な儀式と捉えるか。

すごいなと思えたのは、物語の後半へ行くにつれて生贄を「神聖な儀式と捉えなくもない」と読み手に思わせる上手さ。

北方謙三・馳星周の作品で、アウトローな生き方をかっこいいと思うことはあったのですが、神秘的とまではなりませんでした。

舞台はメキシコから中南米・アフリカ・ジャカルタ・日本へと移ります。

中継地を端折ることなく緻密に描写されているのもこの作品の魅力です。

残虐を覆い隠す悲哀とその描写力

抑圧からの脱出

冒頭の舞台は、アメリカ国境線近くにあるメキシコのとある村。

マフィアの息がかかった村で生きる少女に夢はなく、そこから脱出することもままならず。

メキシコ側の国境線は、アメリカ留学時代に訪れたことがあります。

明け方、国境を渡ってメキシコ側をクルマで走っていたときに、暗がりのなかを歩く大勢の人影が見えました。

友人から「illegal immigrants(これから越境する不法移民)」と告げられても、それほど動じず。

村の光景は、そのとき滞在した寂れた漁村がイメージと重なりました。

知らない世界であれば、そうでもなかったのでしょうが、知っている世界だけに物語をリアルに感じます。

少女が北米を目指さずメキシコ南部から国外へ脱出するまでの描写は、こちらまで息を殺しながら読んでいました。

日本に来てからマフィアの報復はなくなりますが、入管から逃れるため、ビザなしの人間を利用しようとする輩と共存します。

どうしようもなく抑圧された状況から抜け出して、命からがら生き抜く姿に感情移入しそうでした。

ただ、少女の物語は冒頭30ページで終了します。

550ページもあるのなら、最後までこのキャラを活かして欲しかったのですが。

カルテル幹部の逃走劇

少女の物語が終わったのち、2つの物語が始まります。

1つは少女の息子の物語。

もう1つは、壊滅状態のカルテル幹部の逃走と復讐に至るまで。

逃走と復讐は、残虐ではあるのだけれども、ジェイソン・ボーンが活躍するボーン・シリーズを彷彿させてくれます。

麻薬組織の構造、ドラッグとお金の流れについては複雑かつ巧妙で。

アフリカまで逃走し、そこからアジアへ入った導線は、「なるほどなあ」と。

カルテルの幹部にも関わらず、泥臭いことをするところが復讐への凄みを感じさせます。

着の身着のままメキシコから逃れたにもかかわらず、わらしべ長者のごとく、ジャカルタで地盤を築いていくところは面白く。

そこから、カルテルを再建すべく資金集めのため、新たなブラックビジネスをはじめようと日本へ渡ります。

このビジネスがおぞましく。

よく、こんなことを考えつくものだなと。

阪本順治監督の「闇の〇〇」のテーマといえば、おわかりになるかたもいらっしゃるでしょう。

このビジネスが成立したときの描写は、正直読みたくありませんでしたが、文学賞を受賞できるギリギリの線でとどまります。

人によってはアウトでしょうが、賞をとるには超えてはならない線があることを、著者はわかっていたようにも感じました。

続編を期待

海外に比べて法規制が厳しい日本のシーンでは残虐性の描写が減るのかと思いきや、逆に増えます。

ただ、この頃になると、その残虐性はアステカの儀式を創造させるようになり、神秘的な儀式に思えるようになります。

馳星周作品を思わせる逃避行の描写は、読むものを引き込みます。

<編集後記>
2月22日火曜日
6時00分起床後ルーティン
お客さまの申告業務。
午後からブログ更新、udemyでとある学習。

2月23日水曜日祝日
5時30分起床後ルーティン
36時間研修をネット受講。
家で読書。
週末、風邪をもらったようでおとなしくしていました。

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